5/28(金)「降りてゆく生き方」に学ぶキャリアチェンジ・カフェ 開催報告

開催概要

●タイトル: 降りてゆく生き方に学ぶキャリアチェンジ
●主催: ワールド・カフェ・ウィーク実行委員会
●日時:  2010年5月28日(金) 19:00~21:30
●場所: 東池袋あうるすぽっと
●会費: 2,000円

●ゲスト:映画「降りてゆく生き方」森田貴英プロデューサー&小村亮雄さん
●ファシリテーター: ワールド・カフェ・ウィーク実行委員 大前みどり
●参加人数: 33 名 (ゲスト、スタッフ含む)
●テーマ: 降りてゆく生き方に学ぶキャリアチェンジ
●ラウンド数: 3ラウンド

●問い
1)ゲストのお話や映像を受けて、今どんなことを感じていますか?
2)参加者の発言を聴いて、さらにどんなことを感じましたか?
3)明日から具体的に何をしていきたいと思いましたか?

●問いの意図
同じ話を聴いても、同じ映像を見ても、その人の現在おかれている状況や心や体の状態によって、受け取り方は様々です。なので、まずは「今」感じていることを自由に話してもらいました。そうすることによって、人それぞれ感じ方が違うんだなあということや、逆に、同じように考えている人がいるんだなあということを共有できます。

さらに、感じたことを話して終わるのではなく、明日からの毎日に何らかの行動の変化がもたらされるとよいなという思いから3つ目の問いを設定しました。

当日の様子

当日は少し遅れてのスタート。

冒頭に、この「降りてゆく生き方」という映画が、ワールド・カフェ・ウィークを思いついたきっかけになったことや今回のワールド・カフェ自体の開催趣旨をお伝えしました。

できるだけたくさんの会場の方と出会うためのワークを少しした後、

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ゲストの森田貴英さんにマイクをお渡しして、お話を伺いました。

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最初に森田さんご自身が歩んできたキャリアのお話。
もともと森田さんは企業法務の弁護士として、ビジネスやファイナンスのプロとして、映画のファンドを組んだり、映画ビジネスを教える側にいたそうです。

実際にそのスキームを使って作る側にまわってみようと作りはじめたのが、この「降りてゆく生き方」のもとになる映画。もともとは団塊世代を対象にした原作で、テーマはまちおこしでした。

ここで「降りてゆく生き方の軌跡」という映像を見せていただきました。

森田さんは映画をつくる過程の中で、まちおこしの現場を2年間取材されました。実際に日本のまちおこしの現場で活動している方にインタビューを繰り返していく中で、様々な出会いやつながり、気づき、感動が生まれ、取材の中で感じたことや出会った人たちの想いを映画にのせていきました。

「降りてゆく生き方」は一年間で3万人くらいに見てもらっているそうですが、広告宣伝は一切やっていません。当初はあたる映画をつくろうと、大々的にマーケティングをやるつもりだったそうです。

ですが、映画の内容が見えてくると、宣伝をばんばん打って自分たちの利益を得るというやり方がそぐわない。自分がプロデューサーでいろいろ決められると思っていたら、映画の内容によって軌道修正をしていくことになったのだそうです。

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一方、上映リーダーの小村亮雄さんは、高校までを北海道の札幌で過ごし、世界の最先端のビジネスを知りたくてアメリカに留学されました。NYの会計事務所で勤務開始直前に起こった911のテロ。厳しい状況の中、公認会計士として1時間いくらという対価に見合う仕事を求められ、効率や成果に追われ、日々人がやめていったり、病気になるという状況の中で、人と人との関係性がこれでいいのだろうか?と疑問を持っていました。こんなことを続けていった先に幸せがあるのだろうか?ともやもやを抱えていたのだそうです。

そんなとき、日本に駐在に来る機会があり、森田さんと出会ったことで、自分の価値観や求めていた生き方がはっきりしたのだそうです。そのあと仕事をやめて日本に帰ってきて、映画の仕事に携わることになりました。

小村さんがプレ上映という対話の場をやっていて思うのは、みんな自分の中の想いや自分の弱さを出す機会、場がないということ。プレ上映で参加者と語っていくと、どんどんさらけ出してくれるようになるのだそうです。

「仕事で悩んでいる人たちは、目の前の仕事で悩んでいるのではなくて、そういった関係性がないことにつきるのではないかと思うんです。自分の弱いところも話せる、何でも話せると実感できれば何をしていても楽しくなってくるのではないでしょうか」
という最後の言葉が特に印象的でした。

続いて、森田さんから対話についてのお話。

対話をするときに、テーマからずれてはいけないなど呪縛がある人も多いですが、たとえば木村秋則さんは、何かを質問すると過去の経験などを話始めるのだそうです。それは、問いには答えていないかもしれないけど、実は聞いたこと以上に答えてくれている。なので、聞かれたことに答えようとか、こう答えたらどう思われるだろうかというのは、まったくなくていいと思うとのことでした。

「たとえば僕が、どれだけ年収を得ようとも、20代の身長150センチの女の子にはなれない。その女の子が感じることは、気付かないし感じられない。だからどう思うかを聞いて、ああそう思うんだと思う。彼女は、自分とは別の体であるということで、僕にとっては価値がある。だから、そういった彼、彼女らといろんな話をしていると、僕が情報を得るというよりは、僕が拡張していることになる。体もマインドも感じ方も拡張している」

「結局、すべてのものに価値があると気付いてしまったもん勝ちなんです。限られた時間の中で、どれだけ人と出会って心を動かしているかというのが、一番豊かな生き方ではないかと思います」

1時間とちょっと、たくさんの印象的で、本質的なお話をいただきました。

その後、ゲストの森田さん、小村さん、上映スタッフの秋田さん、ちぇんまいさんも、ワールドカフェウィーク実行委員会メンバーも、ファシリテーターも全員加わってのワールド・カフェ。

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各テーブルごとに時間がきても話がまったくとぎれないくらいに対話がもりあがって、時間があっという間に過ぎていきました。

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今回特に印象的だったのは、キャリアチェンジというテーマが入口だったにも関わらず、それぞれの人によって刺さったキーワードがおもしろいくらいに違っていたことです。テーマに縛られすぎず、感じることを感じたままに出して、お互いに刺激をしあうような場になったのではないかと思います。

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(レポート:大前みどり)

工夫したこと、気をつけたこと

・初めてワールドカフェに参加されるという方が多かったので、限られた時間に内容を盛り込みすぎないよう、シンプルな構成にしました。また説明も、必要なことだけをポイントをしぼって伝えるよう工夫しました。

・ゲストと相談し、テーマとかけ離れずに、かつ対話を限定しすぎないような問いを設定しました。

・ファシリテーターとしては、全体を通して、遊びやゆとりを持ってきっちりとしすぎないよう心がけました。

・ラウンドごとの時間の知らせ方は、手上げ方式(全員にだまって手をあげてもらうやり方)だと、ファシリテーターがコントロールしている感が高く感じるので、今回は普通に口頭で知らせたり、チベタンベルを使ってみました。が、話の終わり方にかなりばらつきが出るので、どのようにお知らせすると一番自然にラウンドを切り替えやすいか、これからまたいろいろ研究してみたいです。

参加者の声

●これだけの方々が対話を求めてこの場に集まったことに大きな驚きがありました。ぜひ続けてほしい。(小村亮雄さん)

●自分で覚悟を決めないことには何も始まらないということ。結局、逃げているうちは全然ダメで、ダメな自分をも受け入れて、「それでもヤル」とハラをくくらないとダメでは・・・。当然結論など出ることはないけれど、何の価値判断もせずに人の話を聴き、自分が語らうことで、自分が今何を大切にしているのかが見えてくるような気がします。(今永麻由子さん)

●一人でもやると思えることは何か?という問いに出会えたこと。継続して、取り組み続けていってください。(河合正能さん)

●たくさんキーワードをもらったこと。降りていくことは、会社などのバックグラウンドがない人としての最小単位になること。よりどころは自分の感情、価値観。対話で自分と違う人へのいとおしさ、関心、やさしさ。映画、見に行きたいです。(鷺島利佳さん)

●周りの人間の感覚を反映させながら、生きる。人からたくさんのパワーをもらいながらも、その「感覚を反映させる」という意識を意識的に思ったことがなかったから、気付きでした。(柳原琴絵さん)

●嬉しいです!たくさんの方とお話を交わせたこと!想いを共有できたこと!ありがとうございます。映画の上映が楽しみです!今自分が感じていることを大切にしていこうとさらに強く思っています。そして、成功するためには「ひとりでもやる!」と腹をくくる!!ことですね。(福本裕子さん)

●人と対話する時、聞いたことへの答えのみを求めてはいけないという事。自分はこれまでどちらかというと聞いたことに対する答えのみを求めていて、それ以外はうるさいと思っていたため。(海老沢葉一さん)

●聞く7割、話す3割を実践したとき、人の表情の変化が楽しいと思いました。このようなカフェ(本当のカフェ)が街のあちこち、路上等であれば、楽しい毎日になるので、たくさんの方に体験してもらいたい。(秋田コブシさん)

●映画みてから参加したらもっとよかったかもしれないですが、こうしたキャリアを考えるワークショップのツール(共有テーマ)に映画を使うのは面白いと思いました。映画是非見てみようと思います。「想い」の力で運営されているのを感じました。こうした機会を提供していただきありがとうございました。(匿名)

●限られた中で、人と出会い、対話し、心を動かし、心動くか?開いていけるところ(人)が生き残る。まず、自分からOPENでいることが大事。自分が拡張していくこと。いろいろな人との出会い、対話を通して楽しみになってきました。(匿名)

●初めての参加でしたが、最初のみなさんからの映画の説明も含めて自分が普段感じていることを共有することができました。また、自分の中にあった、まよいのようなものが少しふっきれたような、方向が見えたような気がします。(匿名)

●降りていく生き方は、結局自分がわくわくすることを頭で考えず、信じて「やる」ということなんですね。あと、自分にも優しくし、人にも優しく。それでよいのがほっとします。(匿名)