コラム vol.128「自分がつい取ってしまいがちな行動に気づくには?」
みなさんは学校や研修などで、貿易ゲームを体験したことはありますか?
貿易ゲームとは、1つひとつのグループを国に見立て、与えられた資源で、決められた企画の製品を作って市場で売る、というシンプルですがよくできたシミュレーションゲームです。
1982年にイギリスのNGO、クリスチャン・エイドが開発したもので、世界経済の不平等を知り、新たな行動を起こしていくことを目的とした“開発教育”の教材の1つとされています。
私が貿易ゲームを初めて体験したのは15年くらい前の、あるビジネススクールでのことでした。
そのときの私は、どうしたらよいかあまり考える余裕がなく、グループの中のリーダーのような存在の人の言いなりに動いていました。
時を経て、2回目の体験のときは、すでに同様の体験学習などをかなり経験していたので、「グループ内のタスクと関係性の両方に目を向けて・・・」と考えながら、メンバー一人ひとりがやりたそうなことをやってもらうという、マネージャー的な役割をこなしていました。
考えるのが好きな人、交渉が好きな人、もくもくと作業をするのが好きな人、その人の発言からそういうのを汲み取って、押しつけるのではなく自然に役割分担が出来るようにと働きかけていました。
こんな風にいうと、なんだか物事をメタに見て動いているように伝わるかもしれませんが、、、
実は本当のところは、自分が苦手なことを避けていただけだったのです。
考えて計算をして戦略を立てることも、交渉して合意を得ることも、ただ目の前の作業をこなすことも苦手なので、そういうのが得意そうな人にそれぞれまかせて、ただ全体を見ているという、「自分が安心するポジション」に落ち着いていただけでした。
こんな風に、「自分がつい取ってしまいがちな行動に気づける」という側面が、貿易ゲームのおもしろい一面でもあります。
その後、自分でも多くの研修の場で貿易ゲームを活用してきました。
参加者の方々を見ていると、本当に興味深いです。
話をするよりも、その人の言動を見ているほうが、その人が赤裸々に見えてきます。
きっと仕事の場でも、そういう面が常々あらわれているのではないかなあと思って見ています。
特に多いのが、
・真剣になるがゆえに、ついついきつい口調になってしまう人
・自分のやり方をグループの他のメンバーに押しつけて、雰囲気をギスギスさせてしまう人
・積極的に他のグループに関わっていくけれど、自分のペースで進めようとしているので相手に受け入れてもらえない人
・どうしようどうしようとなかなか決断できない人
・周りの状況に我関せずと、黙々と目の前の作業をこなしている人
一方で、こんな人もいます。
・自分の欲求を通そうとするのではなく、対話をしながらよりよい着地点を探って行ける人
・相手の困っていることをヒアリングして、自分たちが提供できるものを、相手ののぞむ形で提案できる人
・状況の変化に合わせて、臨機応変にどんどんアイデアを出せる人
新人研修の場で、初めてこのゲームを体験する人でも、そういうことが出来る人がいて「すごいな~、将来が楽しみだな~」と思うこともあります。
ここで大切なのは、「全ての人が同じような行動をとる必要がある」というわけでは決してなく、
自分がどういう言動を取りがちなのか?
それは他の人にはどう見えているか?
その行動は目的に照らしたときに機能しているのか?
そういうことに気づくことです。
日常の中で気づいていければいいのですが、処理しなくてはいけないことが山積みな毎日の中では難しいものです。
そこで、貿易ゲームのようなシミュレーションの中で、ふりかえりを通して気づいていくということが、実はかなり有効だったりします。
さらに、自分一人だけではなかなか「当たり前にやってしまっていること」に気づくのは難しいため、他者からのフィードバックが有効です。
特に経験豊富なファシリテーターからの、観察事実をもとにしたフィードバックは、かなりの気づきの効果が期待できます。
実際のところ、参加した多くの方が「たしかに私はそうだった!がーん」となって帰っていくことも多いです。
ということで。
そんな経験豊富なファシリテーターをお迎えし、
「やらないと絶対にわからないけど、やると学びが深く、やった後1ヶ月経ってもじわじわと気づきが来る」
と評判の、貿易ゲームを2月に開催します。
ぜひ一度体験してみてください!
経験者の方も、組むメンバーが違えばまったく異なる体験ができますよ。
●2/22(土)10:00~13:00
「人を巻き込む力を高める!」ワークショップ
https://world-cafe.net/event/post-128.html
会場: 新宿文化センター会議室
(DODパートナー 大前みどり )