Vol.49 関係の質がプロジェクトの成果につながる

今では企業内でプロジェクトという言葉は当たり前のように使われてますが、10数年前まではコンサルタントや特定の職種だけで広まっていました。

わたしも、10年以上前にIT系の企業で多くのプロジェクトに関わり、特にプロジェクトマネジャーを任された時は、特別な気分でミッション遂行を楽しんだ記憶があります。

とはいえ、プロジェクトでのコミュニケーションは、利害関係者の駆け引きに終始してしまうことも少なくありません。そうなると、関係者同士が本音の対話をすることは非常に難しくなります。

建前と本音が横行するようになると、混沌と化し、精神的な負担も大きくなっていきます。その結果、メンバーが精神的に病んでしまったり、成果が出ないばかりか、惨憺たる結果のままフェイドアウトしていく名ばかりのプロジェクトも少なくありません。

10数年前、転職したばかりで、会社の将来を左右する大きなプロジェクトに参加したときのことです。当時は中途入社だったので様子見でしたが、実際はそうもいきませんでした。

連日連夜のタクシー帰り、月200時間を超える残業など、プロジェクト慣れしてない面々(慣れていても体力的には厳しかった)が、体調不良で次々に倒れたり、行方不明になったりと、ただならぬ状況でした。徐々に廃退的ムードが漂い、表情も硬く、だんだんと無口に、、、

わたしがプロジェクトで一番大事にしているのは、関係構築です。プロジェクトの場合、期間の短長はさておき、期間限定であることに変わりありません。だからこそ、初期の段階で、いかに主要なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を構築できるかが鍵になります。それはどんな作業よりも大事だと思います。

まず最初に、臆せずに面と向かって話をすることが欠かせません。日常会話はもちろん、対話レベルでのお互いの理解を深めることも含まれます。

早い段階でお互いを知り、関係が構築できていれば、どんな状況でも話し合いができます。利害を知るということも含まれますが、それ以上に人として相手を知ると、良い意味で情が移ります。普段から一緒に仕事をしていても、相手のことは意外と知らないことばかりです。

プロジェクトでは時間がないから、対話する暇などないという意見の方もいるかもしれませんが、お互いに何も知らずに淡々と任務遂行していくというのは、余程のプロフェッショナルの集まりでないとできません。

これまでも、お互いの文脈合わせもせずに、ひとまず目的、目標を掲げたはいいものの、無駄にエネルギーを注ぎ、疲弊してしまう事例も数多く見てきました。

やることばかりに気を取られずに、まずはできる限り関係を築くために、お互いを知る。そのために会話や対話を活性化させることができれば、自ずと結果も見えてくるのではないでしょうか。

わたしは関係の質が、成果の質につながると考えています。その信念に基づいて、これからも様々なプロジェクトで楽しもうと思います。

(DODパートナー:坂本敬行)