Vol.76「気づきはある日突然に」
突然ですが、私には長年抱えている悩みがありました。
以前しばらく受けていたコーチングでもその悩みについて心理的な要因があるのではといろいろ探ってみましたが、時間をかけても解消しないままでした。
それは何かというと「騒音に弱い」ということです。
今は独立して仕事をしていますので、打ち合わせや研修、ファシリテーションなどの仕事以外は、事務所か自宅など、静かな中で一人で仕事をすることが多いです。
もともとうるさい音は苦手でしたが、今のワークスタイルに変わってからはその傾向がさらに強くなりました。
静かな中で仕事ができるときは問題ないのですが、これまで悩まされていたのは、電車やお店の中などで、大きな声で話している人がいるときでした。
物理的にうるさいので「イヤだな」と思うことに加えて、自分の中の「公共の場ではうるさくしてはならない」といったメンタルモデルが出動して「こんなところでそんな大きな声で話すなんて、人としてどうなの!」と勝手にイライラしていました。
一度イライラのスイッチが入ると、なかなか切れません。
結局その電車内やお店で過ごしている時間、イライラに乗っ取られることになってしまうことが多かったのです。
私がとっていた解決策は、
・電車の車両を変える
・お店の中で席を変えてもらう
・あきらめてお店を出る
・イヤホンをして聞こえないようにする
ようするに「逃げる」ということが解決策でした。
というより応急処置という感じですね。
さて、前置きが長くなりましたが、この夏、そんな私に大きな転機がありました。
何の本かWEBサイトか忘れましたが、"うるさい人たちがいてイライラするときは
「そんなに声が大きくなってしまうくらい、楽しくて(うれしくて)よかったね」
と心の中で相手のことを祝福してあげるといい"という内容を見かけました。
確かにそう思えれば、イライラはおさまっていきそうです。
しかし!
私はそんなに心が鷹揚な人間ではありません。
そんな風に思えそうにないなあ...と思っていたある日のことです。
夕方から急な雨が降り出し、窓が割れるんじゃないかというくらいの大きな音で雷が鳴り始めました。
そんな日に「大雨がいやだ」、「雷がうるさい」などと怒ってイライラしている自分はいません。
ましてや天に向かって「大雨をふらせやがって!」「雷がうるさいから集中できないんだよ!」と叫んだりもしません。
多少いやだな、こわいなと思ったとしても「すごい雨だな、すごい雷だな」と思うか、自然現象だからしょうがないか、と当たり前に受け止めています。
その瞬間、気づきがやってきました。
「そうか、電車の中でうるさい人も、雷だと思えばいいんだ! 」
これだったらできそうです(笑)
早速、次にそういった場面に遭遇したときに試してみると、イライラが湧いてくると同時にすーっと抜けていきました。
さらに、自分自身に余裕があるときは、もう一歩進んで
「そんなにもご自分のことをさらけ出してくれてありがとう」
と思えるようになりました。
どういうことかというと、まったく見知らぬ人たちが、無料で生の声や学びの機会を提供してくれているということです。
女子高生なら女子高生、中年女性なら中年女性、カップルならカップル、今の時代のリアルな現状を観察させてもらえるわけですから、いろいろ参考になります(女性の方がおしゃべりの人が多いからか、うるさいなあと思うのは女性の方が多いです)。
ある小説家の方は、街ですれ違う人の性格をいつも詳細に予想(妄想)していると言います。
それが小説のキャラクターを考えるときに大きな参考になるそうです。
私の場合は、話している人の身体の動き、表情、声の大きさややり取りなどから、その人の気持ちや背景、その人たちの関係性やコミュニケーションのパターンなどを勝手に観察して、想像しています。
これはファシリテーターの能力磨きにうってつけでないかと思うのです。
もちろん、電車や飲食店の中では本を読みたいとか、課題をやっておきたいとか、やりたいことがあるので、能力磨きばかりもしていられませんが、夏の夕方の気づき以降、「雷」、「応急処置」、「観察」の組み合わせによってイライラすることなく騒音を乗り切れるようになりました。
捉われている状態から脱出するきっかけはいろいろありますが、このときは文字通り雷に打たれたような思いがけない気づきでした。
きっと上司の重ーい雷も、奥さんのこわーい雷も、文字通りの「雷」と思って、感情的に反応せずに、まずは避雷することを考えたり、観察をして相手の内面を推し量れると、賢明な対応ができるのかもしれませんね(笑)
(DODパートナー:大前 みどり)