Vol.44 ご機嫌の風を吹かせる

先日、スポーツドクター辻秀一先生の合宿に事務局として参加してきました。

辻先生は、『スラムダンク勝利学』というベストセラーの著者で、東京エクセレンスというプロバスケットボールチームのGMでもあります。

もともとは内科医でありながら、パッチ・アダムスとの出会いをきっかけに、人のクオリティ・オブ・ライフを高めることをライフワーク
にしようと自身がずっと没頭してきたスポーツに目をつけ、スポーツ心理学をビジネスやアートなどスポーツ以外の様々な分野に適用した、応用スポーツ心理学をベースにしたメンタルトレーニングを提供されています。

辻先生のメソッドはとてもシンプル。
人が生きるということは「どんなことを」「どんな心で」するかの繰り返しであり、その「どんな心で」を機嫌のいい状態に
持っていくことで、パフォーマンスが高まり人生の質があがるというもの。

たとえば一見何もしていないように見える「お風呂に入る」という行為や、「眠る」という行為でさえ、そのときの心の状態がどうかで、結果が変わってきます。

その日、会社で起こったある出来事を思い悩みながらお風呂に入ったり、ベッドに入ってまでそれを引きずっているということは、今ここではなく完全に過去にとらわれている状態。
心がとらわれているので、体がしっかり休むこともままなりません。

また翌日出社したら、その出来事のせいで上司に何と言われるかと不安におびえ、まだ起こっていない未来にゆらいで眠れないなんてことも翌日の自分のパフォーマンスをより悪くしてしまう結果になりかねません。

心の状態を整えて、今この「お風呂に入る」「眠る」という行為に集中できていれば、体も気持ちもリラックス、リフレッシュされ、
もともと自分を悩ませていた出来事に向かう気力が戻ってきます。

気をつけたいのは、いわゆるポジティブシンキングやプラス思考の罠。
たとえば、この一見いやな出来事には意味があるんだと、無理にプラスに意味づけようとしたり、なんとかなる!と気にしないふりをすることは、問題の根本は何も解決していないだけでなく、自分の中に生まれたその出来事をいやだと思う感情を抑圧し、何かしら似たような状況にぶつかったときに、その感情が増幅される可能性があるのです。

辻先生のトレーニングでは、過去にとらわれ、未来にゆらいでいる自分に気づき、その心の状態をより機嫌がよい状態にもっていくための「ライフスキル」が体系化されており、それを様々なワークを通して習得していきます。

これはそのまますべてが、ファシリテーターとして場をつくる人にとって大きな力となるスキルです。

そこで今日はみなさんに、すぐに実践できるものをお伝えします。

それは「与えると考える」というスキルです。
ポイントは「ただ考える」というところです。

与えるとは、具体的には「リスペクト、チア、アプリシエイト」の3つの要素です。

たとえば、ファシリテーターをしているときに、とても否定的な態度をとる人がいて自分がゆらいでしまったとしたら。

まずは、ゆらいでいる自分に気づきます。
そして、「この人を尊重する、この人を応援する」
そして「ありがたいな」と考える。

これは本当にそう思っている必要はありません。
人間なのだから、場を壊そうとする人がいたら怖いですし、イラッとしたり、ムッとしたりしますよね。

また、ありがたい理由も必要ありません。
だってもともとはそう思っていないのに、無理に理由をつけてもしょうがないですから。

その人に向かって言う必要もありません。

ただ、そう考えてみる。
もしくは、思い浮かべるといった方が近いかもしれません。

その瞬間、「心にご機嫌の風が吹く」ので、その心の状態で
そのあとの対処を考えることが大事なのです。
時間にしたら、ほんの1秒、2秒のことです。

でもそれをできるかできないかで、そのあとの自分の行動や結果は大きく変わってきます。

頭で考えて理解しようとすると、それはそうかもしれないけど...と
納得感は得られないかもしれません。
そんな方こそ、今すぐ、目の前の人に対して
「リスペクト、チア、アプリシエイト」を考えてみてください。
しつこいようですが、直接言う必要はありません。

考えた瞬間、自分の心の状態は変化しましたか?

日常でそうやって自分の心の状態を観察するチャンス。
つまり、ゆらいだりとらわれる瞬間はたくさんあります(笑)

ぜひ一度、と言わずにご機嫌の風が感じられるまで、試してみてください。

DODパートナー:大前みどり