【レポート】8/26 「対話の時代へ~わかりあえないことから始まるコミュニケーション」

【開催概要】

●タイトル: 「対話の時代へ~わかりあえないことから始まるコミュニケーション」
●主催  : ダイナミクス・オブ・ダイアログLLP
●日時  : 2014年8月26日(火)18:30~21:30
●場所  : 豊島区立舞台芸術交流センター あうるすぽっと 会議室B
●参加人数: 参加者45名 内訳)ワークショップ参加30名、オブザーブ参加15名
●ファシリテーター: 平田オリザ氏 


ダイナミクス・オブ・ダイアログLLPでは、昨年12月に実施し大好評であった平田オリザさんのワークショップを開催しました。今回はワークショップ参加者の立教大学経営学部4年生、役者を目指し演劇勉強中の西本健太朗さんからレポートです。
 
 

はじめに 

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職業もここに来た目的も違うであろう30人のワークショップ参加者と、15名のオブザーブ参加者。平田オリザさんが話し始めると、これからどんなことを話してくれるのかと、皆ノートと鉛筆片手に席に座っていました。僕もその一人です。しかし5分も経たないうちに「これからゲームをします」と体を動かす授業が始まるのでした。戸惑いながらも席を立つ参加者たち。こうして3時間のワークショップが始まりました。
 

ワークショップ

■コミュニケーションゲーム
最初に行ったのは、オリザさんが質問したことに対して、同じ回答をした人たちでグループを作るというゲームでした。例えば、「好きな色は?」と聞かれたらみんなが一斉に声を出し、ざわざわしている中で自分と同じ答え同士で固まるというものです。

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ゲームを繰り返していく中で質問の抽象度は増していき、次第に同じ答えを言う人が少なくなっていきます。オリザさんは世界各地でワークショップを行っているため、同じ「ベルギーと言えば?」という質問でも日本人とベルギー人では回答が違うというお話をしてくれました。国民が持つ国のイメージと、外国から見たその国のイメージは違うということです。また、このゲームをちゃんと行ってくれない中学生にはどうすれば良いか?という質問も続き、ファシリテーターとしてプログラムに縛られず、うまく行かなかった時は参加者を責めるのではなく、システム自体を見直すことが大事であるという言葉が印象的でした。
 

■信頼関係を作るワーク

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次に行ったワークは、身体を使ったワークです。チームプレイのスポーツの練習でも最近取り入れられているらしいのですが、ペアで背中合わせになり立ち上がるワークや、3人1組で倒れあうワークなどをしました。
これを行うことにより、参加者全体に一体感が生まれ、みんなの前で発表することがしやすくなるみたいです。このゲームによって、それ以降のワークにおいても参加者による積極的な発言が増えた気がします。

 
■1-50のカードゲーム

参加者全員に1番から50番までのカードが1枚渡されます。数字が大きければ大きいほど激しい趣味。小さければ小さいほど穏やかな趣味を決めて、自分と数字の近い人を探すゲームを行いました。その結果、人によって激しい穏やかの基準が違うこと、そして、その人がどういうつもりで激しいと思っているのかを理解することが大事であるということがわかりました。同じ言葉でも人によって感じ方が違うので、その人がどういうつもりでその言葉を言っているのか?というコンテクストを理解することが重要なのです。
 
 
■イメージゲーム

そして、今回の一番のキーワードであったのは、「イメージの共有」。
まず、イメージの共有の難しさを理解するため、エアーでキャッチボールを行い、その後、実際にゴムボールを使ってキャッチボールをしました。実際にボールを使ってやってみるといかにそのエアーができてないかということがわかります。お互いにボールの重さや速さ、緊張感などのイメージの共有ができていないと全く上手くいきません。つまり、お互いにイメージの共有をしないとエアーでのキャッチボールは成立しないということです。

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イメージの共有はしやすいものとしにくいものがあり、その後、6人1チームでエアー大縄をやったのですが、これはリズムや軌道が見えやすいため、イメージの共有がしやすく、見ている人たちにもイメージが共有されました。また、イメージの共有はしやすいものから表現し、しにくいものに移行としていくと伝わりやすいことがわかりました。演劇の世界でいうと、最初の10分でその作品の世界観を作り出すことが重要であるみたいです。

実際の役作りにおいても、共演者同士で関係性や設定を深いところまで話し合うのですが、まさにこれはイメージの共有であることがわかりました。共演者同士で共通のイメージを持つことによって、お客さんに関係性が伝わりやすくなるのは、このためであることが理論的に理解できました。
 
 
■演劇体験

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最後に台本を使った講義も行いました。場の緊張感、雰囲気を作り出すための演出論。
そして、見知らぬ人に声かけるための「ご旅行ですか?」というセリフから色んな話が展開されていきました。
  • 国によってそのセリフの言い方が大きく異なる?
  • 他の言語にはない日本語の特徴とは?
  • 普段声をかけない人は、どうすればこのセリフを違和感なく言えるようになるのか?
など、一つのセリフから異文化理解、コミュニケーション術に展開していく論理展開はとても新鮮で、コミュニケーションが大事とされている現代社会において、演劇というものは大事なツールになりえるということがわかりました。
 
 
3時間あっという間の講義で、いつの間にかオリザさんワールドに参加者全員が入りこんでしまっていました。振り返ってみると、3時間の講義はイメージの共有のしやすいゲームから始まり、しにくいものへと移り変わっています。私たちがあっという間に感じた理由は、オリザさんの世界に入るような仕掛けがされた講義であり、全て演出されたものだったからではないでしょうか?
また、個人的には演劇が人格形成やコミュニケーションスキル向上のために活用できるとなれば演劇には無限の可能性があり、今後の演劇界の明るい材料になるのではないかと思いました。

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日本人は演じるということに"嘘をつく"などマイナスなイメージを持つことが多いです。しかし、英語で演じることは "play" 。本来は演じるということは楽しいことです。それを教えてくれた講義でした。
 

レポート:立教大学経営学部4年生 西本健太朗