Vol.78「心に響く」

「アニメーションは記憶を描くメディアなんです」


この夏に公開されて大ヒットとなったアニメーション映画「君の名は。」の新海誠監督の言葉だ。

「描かれている風景や町並みの絵が奇麗」と多くのファンが語る。
そこはこの映画の魅力のひとつだと、私も思う。
新宿、四ツ谷、千駄ヶ谷。
行ったことのある、見たことのある風景がそこにあると、他の風景を見ているときとは違う感動がある。

風景の美しさに魅力を感じる理由として監督は

「記憶を描いているから」

と言う。

「一回記憶の中に入れたものを描くんです。だから少し特別な見え方をするんだと思うんです。」

実写だと見たままの風景が現実となる。記憶にアクセスすることはない。
しかし、その風景が絵だとわかると、それがどこなのか、現実にどれだけ近いのか、を私たちの脳が探しに行く。
一致している度合いが高いほど感動を呼び起こしやすいのだろう。
監督の言う「特別な見え方」とはそういうことなのではないだろうか。

しかし、アニメーションで描かれた絵は実際とは少し異なっていたりする。
でも人は記憶とその絵を重ね合わせて、どちらかがどちらかを補うような見方をし、現実以上の美しい絵にしてしまうのだろう。
だから、よりキレイに見えてしまうのかもしれない。

絵だけでなく、ストーリーもそうなのだと思う。

多くの人の記憶の中にある切ない想いが、主人公たちとシンクロする。
見ているストーリーと自分の記憶のストーリーが重なることで、感動を生み出しているのだと思う。

とすると「心に響く」というのは、人の心にある記憶にアクセスし共鳴している、ということなのではないだろうか。

記憶と心のつながり。
満月の夜にそんなことを考えた。

(DODパートナー:中川 繁勝)