Vol.52 ファシリテーション失敗談

ワールドカフェのつくりかたや、その他の講座などで、参加者の方からよくあがるのが「これまでファシリテーションで失敗した体験を教えてください」という質問です。

失敗体験というのは、共感が集まるのか、みなさんが熱心にふんふんと聞いてくれます(笑)
それだけファシリテーションをする場では、対応に迷うようないろいろなことが起こるものなのでしょうね。

何を持って失敗と呼ぶかは別として、今日は私自身が「やっちゃったなー」と思うような体験をいくつかご紹介します。

失敗談としては、大きくわけると3つのパターンがあります。

(1)準備不足

・胃腸風でダウンし、当日に開催中止に!(代打を準備できなかった)
・延長コードがない、ペンが足りないなど備品不足!
・参加者の方に違う会場を案内しており、開催1週間前に気づいて訂正!(大汗)
・当日会場に行ったら、会場が予約できていなかった!(滝汗)

これらはファシリテーション以前の問題ですね、、、
こういったことは、言うまでもなく、事前の想定や準備、再発防止が必要です(気をつけます!)。

(2)もともとのワークショップのテーマ設定や問いが、参加者の期待とずれていた

DODの前身となる活動では、よく著者を招いての読書会ワールドカフェを開催していました。
(これは香取一昭さんの書籍『ワールド・カフェをやろう!』で紹介されているので、お持ちの方はぜひご覧になってみてください)

あるとき、どちらかというとビジネスノウハウをテーマにした本を課題図書にワールドカフェを開催しました。

始まってから少したって、何か違和感を感じ始めました。
何かいつものワールドカフェと様子が違うのです。

そこでしばらく参加者の方々の発言を聞いていると、理由がわかってきました。
参加される方々は、ワールドカフェに参加をしに来たのではなく、その本でとりあげているビジネススキルについての情報を得たい方が多かったのです。

そこで著者に質問が集まり、講師がレクチャーするセミナーのようになってしまいました。
これはもともとこちらで設定したテーマをうまく参加者の方に伝えられなかったことや、どうしてもやり方やノウハウの話になってしまうテーマを選んだこと自体に問題があります。
これも、ファシリテーションというよりは、準備の問題かもしれません。

(3)自分自身の状態(あり方)が揺らいでいた

ある連続講座に、受講生として参加していたときのことです。
5人のグループで何週にもわたってプランをつくるという課題がありました。
みんなそれぞれ背景が異なり、中には外国人の方もいます。
その中で、メンバーの一人が最初はずーっと黙って聞いているかと思ったら、ひとたび発言したとたん、マシンガンのように何分も話し続けるという状況に。

トピックもどんどん変わっていき、他のメンバーはただただぽかーんと聞いている状態。
さらに、他のメンバーが発言をした内容を否定して、そのアイデアがよくない理由をこれまたマシンガンのように発するという状況でした。

ホワイトボードの前でみんなの発言を書き留めていた私は、その態度にイライラしてしまい、発言を書き留めることもだんだんできなくなっていきました。
そして、「この段階でそうやってできない理由を言ってても先に進まないので、後で話せばいいんじゃないですか?」と発言全体を無視するようなことを言いました。

その後その人は黙ってしまい、一切発言しなくなりました。
私はどうしたらよかったのか、講座が終わってからも結構考えてしまいました。

さて、みなさんならこういう時、どうしますか?
(会議のときにいつもそういう人がいて困ってます・・・)と心の中でささやいた人もいらっしゃるでしょうか?

DODの講座の中でも「ワールドカフェやワークショップ中、一人で延々と話す人がいたらどのように介入すればいいでしょうか?」というのは、100%毎回上がる質問です。

これはそのときの状況や参加者の関係性(いわゆるコンテクスト)などによって、様々な対処法があると思いますが、

私自身の考えとしては、ネガティブ(と思われる)な言葉や態度が出ている背景には、「こうした方がいい」「こうしたい」という、その人なりのポジティブな想いがある。だからこそ、そうでないことに対して反対や否定をする。ネガティブを出しつくすことで、その本当のポジティブな想いが出てくると思っています。

ただしこれ、いうのは簡単ですが、実際にやってみると「出しつくす」ってどれくらいの時間がかかるのか予想もできません。
なので、その後心掛けるようにしたことがいくつかあります。

・そもそも何かを期待をしない。手放す。
・自分の感情が反応し始めたら、反応していることに気づく。
・自分の体でどこか力が入っていないかスキャンする。
・相手の発言内容ではなく、呼吸やトーンを観察する。
・呼吸のタイミングで、発言の内容を「こう聞こえました」「こう受け止めました」と要約して返す。その際、少し意識してペースをスローダウンする。
・それぞれの意見をホワイトボードに書きとめ、人と意見を切り離し、その意見に対してどう思うかをメンバーで話す。

さて、それでうまくいったかというと、そこまで効果があったとは言い切れないところがありますが、少なくとも自分自身の状態がフラットになったので、感情が反応したり、振り回されることが少なくなりました。

そして、どうしても成果を求めがちな(自分の望む成果を期待をしている)自分に気づき、それを手放すことが、実は一番成果に近づくことなんだなーということもあらためて実感しました。

今回、書いたことは失敗体験の本当に一部ですし、他にも自分が気づいていないところで、とんでもないことをやらかしているかもしれません。

ただ、最近思うのは、「やっちゃった!」と思ったときに、いかにその揺らいでる自分を客観視し、ニュートラルに戻れるかというのが重要で、失敗をしないことよりも、何かがあってもすぐに自分の状態をリカバリーできるということが、ファシリテーターとして大事なのではないかなということです。

よろしければみなさんの失敗体験やそこからのリカバリー体験などもぜひ教えてくださいね。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!

(DODパートナー 大前みどり)