Vol.45 本音を引き出す

先日、ある企業のリーダーミーティングでファシリテーションをしているとき、ひとりのリーダーから「お互いにもっと本音で話そう!」という声が上がりました。

彼らは、これまでミーティングの場において、お互いに気を遣うばかりで、言葉のキャッチボールどころか、ただ押し黙ってしまうことも少なくありませんでした。

そのため、もっと成長したい、より良い会社にしたいという思いは強いのに、自分たちの経験を越える新たなプロジェクトや挑戦に対して、本音を出すことに、臆病になってしまう傾向があると自分たちで気づいたのです。
だから、まずはお互い本音で話し合い、打開策を見出そう、と。

まず最初に「本音とは何か?」
本音の意味を辞書で調べると、「本心からいう言葉」
では、本心の意味を調べると、
「本当の心。真実の気持ち。本来あるべき正しい心。良心。」などです。
つまり、本音を話すのに大事なのは「心」ということになります。

実際、みなさんの中で、ミーティングや日常の中で、肩書きや立場に関係なく、自分の心から生まれる本音を、恐れることなく語れる人はどれだけいるでしょうか。
職場で、心に正直である、心から生まれる声を発信する勇気を持つことの難しさは、誰よりもみなさん自身がご存知だと思います。

ワールド・カフェをはじめとしたホールシステムアプローチなどの対話の手法は、まさしく様々なアイデアを引き出すのには打ってつけですし、そういった場づくりに貢献することが可能です。
ただし、あくまでも実践手法ですので、組織特有の風土、文化に影響されますし、準備が不十分であれば、いつも通りの場になってしまう可能性さえあります。
やはり、日常の中で「本音を話せる」風土、文化が育まれていれば最高です。

とはいえ、私たちは普段、日常慣れ親しんだ視点から世界を見ています。
経験的に身につけたものの見方の枠組み、すなわち認知フレームを持っています。
その枠組みは、今この瞬間の心とは別で、経験的なものですから、本音ではないかもしれません。

従って、本音を話すために、自分の心を尊重できるかどうかにかかっています。

必要なのは、心をみつめる、自分をよく知るということです。

1.自分の心に意識を向ける・・・心の動き、感情に目を向ける
2.自分の心に何が起きているか、そのまま観察する
3.どんな時でもジャッジしない
4.シンプルに心の動きに気づくことができるようになる
5.そこから湧いてくる思いやアイデアを言葉にしてみる

以上のプロセスは、今この瞬間の本音を引き出すための最低限です。
簡単ではありませんが、心当たりのある方はぜひ試してみてください。
慣れてくると瞬間でできるようになります。

こういったプロセスを場で行う場合は、ファシリテーターが介在することで、そのときに必要な気づきや変化を生み出すことを促進する役割を果たします。

冒頭のリーダーたちも、同様のプロセスを繰り返し、彼ら自身で気づくように促してきたことで、「もっと本音を話そう!」と変わり始めました。

そういった気づきは、ファシリテーターにとっても喜びだったりします。

(DODパートナー:坂本敬行)